本作の配役が傑出している理由は、映画界の重鎮とトップ声優が互いの領域を侵すことなく、完璧な化学反応を起こしている点にあります。
主人公・熊徹を演じた役所広司さんは、細田監督が脚本執筆の段階からイメージしていた通りの熱演を披露しました。粗暴で不器用、しかし底知れぬ温かさを持つ熊徹の魂の叫びは、役所さんの圧倒的な存在感があってこそ成立したものです。さらに、熊徹を取り巻く悪友コンビとして、多々良役に大泉洋さん、百秋坊役にリリー・フランキーさんを配置。この2人の掛け合いはほぼ本業のトークを彷彿とさせる軽妙さで、シリアスになりがちな物語に絶妙なユーモアと心地よいリズムを注入しました。
そして、作品のクオリティを根底から支えたのが、宮野真守さん(一郎彦役)、山路和弘さん(猪王山役)、山口勝平さん(二郎丸役)、諸星すみれさん(チコ役)ら超一流のプロ声優陣です。特に終盤、闇に呑まれていく一郎彦の狂気と悲哀を演じきった宮野真守さんの演技は圧巻であり、実写系俳優のナチュラルな芝居と本職声優の劇的な表現力が激突することで、アニメ史に残る緊迫感あふれるクライマックスが生み出されました。