猛毒草が恐れられる一方で、日々の暮らしを守る盾として愛されたのが芳香性の高いハーブたちでした。
古くから「庭にセージを植えている家から死人は出ない」とまで謳われたセージの浄化効果と魔術的な威力は絶大でした。乾燥させた葉を燻して空間を清めるスマッジングの儀式は、現代の研究でも空気中の細菌を劇的に減少させる殺菌効果が実証されています。肉類の腐敗を防ぐ保存食作りにも不可欠な存在でした。
青い小花を咲かせるローズマリーの魔除け効果は、疫病除けとして固い信仰を集めました。17世紀にペストが流行した際、死者から金品を奪いながらも感染しなかった盗賊たちが身体に塗っていた「4人の泥棒の酢」の主原料がローズマリーでした。カルノシン酸やロスマリン酸などの強力な抗酸化・抗菌成分が、病原菌から彼らの身を守っていたのです。
オウシュウヨモギとして知られるマグワートの効能と使い方は、神秘主義と実用性が融合した好例です。枕の下に忍ばせると予知夢や明晰夢を見ると信じられた一方、旅人が靴の中に葉を入れて長旅の筋肉疲労を防いだり、月経不順や産後の肥立ちを助ける女性のための妙薬として日常的に煎じて飲まれていました。