本作が他の劇場アニメと一線を画す最大の理由は、初期ポケモンアニメの世界観を築いた故・首藤剛志氏による容赦のないシナリオにある。首藤氏が描いたのは、正義のヒーローが悪を叩きのめすありがちな勧善懲悪の痛快劇ではない。傷ついた少女ミーの「開けてはならない心の内」であり、寂しさが生み出した妄想の王国そのものだった。
考古学者の父親の失踪。母親の不在。世界から取り残された幼い少女の切実な祈りに、謎のポケモン・アンノーンが反応する。少女が願う「理想の日常」を叶えるため、空間は書き換えられ、父親の面影を宿したエンテイが生み出された。首藤氏がストーリーに潜ませた「閉じられた自己愛からの脱却」という重層的なメッセージは、現代社会におけるメンタルヘルスや孤立のテーマと戦慄するほど深く共鳴している。