大将である高橋徹氏の仕事には、一切の妥協がない。かつて日本の老舗鮨店で長年修行を積み、江戸前の伝統技術を体に染み込ませた同氏だが、ロンドンという異郷の地にあってもその美学は全く揺らいでいない。
2026年現在のハイエンドな鮨シーンでは、華やかな演出や奇抜なフュージョン料理がもてはやされる傾向もある。しかし高橋氏の手から生み出されるのは、徹底的に削ぎ落とされた本物の江戸前鮨だ。赤酢と米酢を絶妙にブレンドしたシャリの温度管理、握る直前の手粉の扱い、包丁を入れる角度の一つひとつに、長年の経験と研ぎ澄まされた勘が宿っている。