肺炎の重症化を客観的に捉えるうえで、最も信頼性の高い指標となるのがバイタルサインの推移です。特に「呼吸数」と「動脈血酸素飽和度(SpO2)」の数値は、自覚症状を訴えられない高齢者の体内危機をリアルタイムに告げる生命線となります。
急変時に真っ先に現れるバイタルサイン変化は、実は体温や血圧ではなく「呼吸数の増加」です。成人の正常な呼吸数は毎分12〜20回程度ですが、肺のガス交換機能が落ち始めると、酸素不足を補うために無意識に浅く速い呼吸(毎分25回以上)を繰り返すようになります。肩を使って息をしている、小鼻がピクピクと動いている、肋骨の間や鎖骨の上が息を吸うたびにペコペコと凹む「陥没呼吸」が見られる場合は、呼吸筋が疲弊しきる寸前の極めて危険なサインです。
在宅や施設にパルスオキシメーターがある場合、高齢者肺炎における酸素飽和度低下を数値で把握できます。普段の基礎値から明らかな下落を示し、SpO2が90〜92%を下回る状態は組織への酸素供給が限界に達している証拠です。さらに酸素化が悪化すると、唇や爪の毛細血管が紫色〜暗紫色に変色するチアノーゼと呼吸不全が顕在化します。この段階に達すると、中枢神経への酸素不足から不穏やせん妄、呼びかけに反応しない高度な意識障害を伴い、数十分単位での心停止リスクが生じます。