能登半島地震の発生直後から、「日本海の断層破壊が引き金となって南海トラフが連動する」といった言説がネット上で目立つようになりました。しかし、南海トラフ地震に関する専門家の見解や気象庁の公式見解を総合すると、能登半島地震が南海トラフの直接的な引き金(トリガー)になるという説には科学的な根拠がありません。
地震学において「誘発地震」と呼ばれる現象は、大地震によって周辺の断層にかかる力(クーロン応力)が大きく変化することで発生します。しかし、能登半島の震源域と南海トラフの想定震源域は直線距離で約400キロメートル以上離れています。この距離において伝わる静的応力変化は極めて微小であり、南海トラフの巨大な固着域を直ちに破壊に至らしめる規模ではないことが数値シミュレーションでも立証されています。
ネット上で拡散した連動説の多くは、過去の歴史地震が同時期に多発した記録を短絡的に結びつけた誤解に基づいています。「能登が動いたから明日南海トラフが来る」というような直接的ドミノ倒し論は、地下構造を無視した誇張された言説に過ぎません。