タコを煮て失敗する最大の要因は、タコ特有の筋肉構造とコラーゲンの性質にあります。タコの体は強靭な筋肉繊維が何層にも密集して重なり合っており、それをコラーゲンが強固に束ねています。
この筋肉は、加熱温度が60度を超えると急激に縮み始め、水分を外へ絞り出してしまう特性を持ちます。中途半端に10〜20分程度煮汁でグツグツと強火加熱すると、繊維が限界まで収縮して凝固し、まさに「噛み切れないゴム」のような食感に仕上がってしまいます。
タコの煮物で硬くならないコツは、実に明快です。「短時間で火を止める(サッと温める程度)」か、もしくは「1時間以上かけてじっくり弱火で煮込み、硬化したコラーゲンをゼラチン化させて繊維をほぐす」かの二者択一しかありません。じっくりコトコト煮含めることで、一度硬くなった身がふたたび驚くほどの柔らかさへと変化していきます。