知人や同僚に対して「〇〇さんは本当に達筆ですね」と伝えることは問題ありません。しかし、上司、役員、顧客、恩師などの目上の人に対してこの言葉を投げかけると、ビジネスマナー上は明確な非礼とみなされます。
失礼にあたる決定的な理由は、「達筆」が能力や技量に対する評価・品定めの言葉であるためです。日本語の敬語原則において、目下の者が目上の者の技能や成果を直接評価することは「上から目線」の構造を作ってしまいます。「上手ですね」「上手にできましたね」と大人が子どもを褒める構図と同じ力学が働いてしまうのです。
言語コミュニケーションの観点からも、「褒める」という行為には無意識の優位性が含まれます。目上の人に対して必要なのは能力を判定する「評価」ではなく、相手の立ち居振る舞いや書かれた文字に対する「敬意と感銘」を伝える姿勢です。この境界線を踏み越えてしまうことが、マナー違反とされる根本的な原因です。