多くの参拝者が頭を悩ませるのが、「清めたお金はすぐに使ったほうが金運が上がるのか、それともお守りとして財布にしまっておくべきなのか」という問題です。ネット上では「その日のうちに使い切らないと効果が消える」「一万円札を種銭としてずっと財布に入れておくべき」といった相反する言説が飛び交っています。
この疑問に対し、伝統的な信仰の教理および神職の教えを総合すると、明快な結論が導き出されます。すなわち、「清めたお金は、世の中のために感謝を込めて使うこと(生きたお金として循環させること)」が本義です。
お金とは本来、人々の間を巡るエネルギーであり血液のような性質を持ちます。湧き出る霊水「銭洗水(鎌倉五名水の一つ)」でお金を清める行為は、自身の欲深さや執着といった穢れ(けがれ)を洗い流し、清らかな状態に戻すための儀礼です。清められたお金を滞留させず、社会の経済活動や他者の喜びのために使うことで、その徳が何倍にもなって巡り巡ってくるというのが弁財天信仰の根幹にあります。
一方で、「一部を種銭として財布に保管する」という方法も完全な間違いではありません。例えば、洗った五百円玉や千円札を「福銭」として財布のお守りポケットに納め、日々のお金に対する感謝を思い出すアンカー(意識付け)として機能させることは、心理的にも浪費を防ぐ効果を発揮します。ただし、全額を金庫などに死蔵させてしまう「死に金」の状態は、循環を重んじる神道の教えからも避けるべき状態といえます。