不気味と恐れられたあのキャラクターには、れっきとした出自と名前が存在します。正式名称は「スマイレージュ(Smiley)」。誕生の舞台は日本ではなく、20世紀初頭のアメリカでした。
1900年代初頭、米国の名門タイヤメーカー「B.F.グッドリッチ社」が宣伝用キャラクターとして考案したデザインが原点です。当時、横浜護謨製造(現・横浜ゴム)は同社と資本・技術提携を結んでおり、1960年代初頭の日本国内プロモーションにおいて、このアメリカ生まれのスマイレージュをそのまま導入しました。モデルとなった特定の人物についての公式記録は残されていませんが、当時のアメリカ広告で多用された「極上の笑顔を浮かべるセールスマンやエンジニア」のイメージを記号化したものとされています。
陽気で屈託のないアメリカンスタイルのスマイルは、当時の米国文化の象徴でした。しかし、奥ゆかしさや自然な表情を好む日本の景観や生活文化の中へそのまま移植された結果、カルチャーギャップによる「異様さ」が際立ち、意図せぬホラーアイコンへと変貌を遂げてしまいました。